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子どもが、大人をひらく——台本のない演劇がはじまる。「感じてつくる!こども演劇ラボ」初回レポート
催し名:感じてつくる!こども演劇ラボ
開催日:2026年5月16日(土)
「きれいな輪をつくってみよう」。初回の冒頭で子どもたちに投げかけられたのは、そんな素朴な呼びかけでした。一列に並ぶことはできても、円になって自分の立ち位置を測ることは、低学年の子どもにとって驚くほど難しいといいます。けれどこれは、単なる準備運動ではありません。他者との距離を身体で感じ取り、全体のなかに自分を位置づける——空間の感覚と、他者への想像力が同時に育まれる時間なのだと思います。
この5月、應典院で「感じてつくる!こども演劇ラボ」が始まりました。「演劇」と聞くと、台本を覚えて役を演じる姿を思い浮かべる人が多いかもしれません。しかし、このラボが大切にしているのは、その対極にあるものです。相手から感じ取った気持ちを起点に、自分の内側から湧きあがるものを、即興でかたちにしていく。あらかじめ決められた正解のない、生きた創造の場です。初回に集ったのは、小学2・3年生の子どもたち10名ほど。舞台芸術の現場を長く歩んできた表現者たちが、その場をともに編みました。
続くワークでは、「〇〇が好き、なぜなら……」と、好きなものの理由を掘り下げる対話が交わされました。ここにあるのは、誰かが用意した答えではありません。一人ひとりが自分の「好き」を、自分の言葉で問い直していく営みです。子どもたちの語彙の豊かさと、まだ凝り固まっていない思考の柔らかさに、周りの大人たちが舌を巻く場面もあったといいます。
そしてクライマックスは「全力ジャンケン」。音楽が流れると身体が自然に揺れ、いつしか踊り出す子どもが続出します。最後は手拍子が会場を包み、子どもも大人も、見守っていた人々までもが、ひとつの場に溶け合っていきました。
ここで起きていたのは、大人が子どもに何かを「教える」という一方向の関係ではないようです。むしろ、子どもたちの解き放たれた心身に大人の側が驚き、心を動かされ、ひらかれていく。「子どもは大人の父である」と詠んだ詩人がいますが、この日の應典院には、その逆説がそのまま立ち上がっていたのかもしれません。
お寺というと、静かに手を合わせる場所を思い浮かべるかもしれません。けれどこの日の應典院は、世代や立場を超えて人が互いに育ち合う、開かれた学びの場になっていました。かつての寺子屋がそうであったように、まちのなかのお寺が、人の集い、教え合い、学び合う場所になる。教育を子ども期だけのものと考えず、人生の全体を通じて、みんなで分かち合っていく——そんな営みの入り口が、ここにはあるように思えます。そして、遊びのなかで育まれた感性は、きっと家庭での語らいへ、やがて地域の日常へと広がっていくはずです。
ラボは今後も継続して開かれる予定です。台本のない場から、次に何が生まれるのか。子どもたちの全力の笑い声に、私たち大人のほうこそ、耳を澄ませてみたくなります。
本イベントは應典院の主催で開催されました。当日のより詳しい様子は、以下の詳細レポートをご覧ください。https://www.outenin.com/article/article-21296/
*イベント概要はこちら
https://www.outenin.com/article/article-21014/
