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「よい保育」は、測れるのか——オンライン読書会『よい保育とは何か』初回レポート
催し名:オンライン読書会『よい保育とは何か―技術的実践から倫理的・政治的実践へ』を読む(第1回)
開催日:2026年7月15日(水)
「難しくても、自分の読解力不足だと悩まなくていい。ルールの違う異国を旅するように、少しずつ親しんでいけばいい」。初回の画面越しに、案内役を務める教育学の研究者から、そんな言葉が投げかけられたといいます。
この夏に始まったのは、海外の保育思想書を1年がかりで読み進めるオンライン読書会です。毎月1回、来年3月まで全9回。幼稚園の理事長や園長、保育者、臨床心理士、大学院生、さらには中国の大学で幼児教育政策を研究する参加者まで、多彩な顔ぶれが各地からオンラインで集いました。テキストは、2026年1月に翻訳出版されたばかりの『よい保育とは何か―技術的実践から倫理的・政治的実践へ』。世界の保育をめぐる議論のなかで、最重要の一冊に位置づけられる本です。
なぜいま、この本なのでしょうか。背景には、保育を「測る」流れの広がりがあります。幼児教育への投資は将来のリターンが大きい——そんな経済の言葉が世界的に浸透し、保育は決められた成果を効率よく生み出す「技術」として評価されるようになりました。「質」という言葉さえ、いつのまにか標準化と比較のためのものさしとして機能しはじめている。本書はその流れを頭ごなしに否定するのではなく、いったん立ち止まって客観視し、別の語り方を探ろうとします。子どもを大人の基準に当てはめるのではなく、思い通りにならない一人の他者として尊重すること。そして園を、サービスを提供する施設ではなく、子ども・保育者・保護者・地域が共に育ち合う「ひらかれた民主的な場」として捉え直すこと。それがこの本の提案です。
印象的だったのは、参加者それぞれが語った動機でした。「理念なき現場と、現場なき理念をつなぎたい」「慌ただしい日常から一度離れて、根本から考える時間を持ちたい」「伝統を守るためにこそ、トップが学び続けたい」。日々子どもと向き合う実践者たちが、あえて難解な思想書に挑む。その姿勢そのものが、正解を効率よく求める学びとは別の、時間のかかる学びの価値を物語っているようです。対話のなかでは、半世紀にわたり子どもと向き合い続けた日本の実践研究の先達の名前も挙がり、「借り物の理論ではなく、自分の言葉で保育を語り直す」という本書の課題が、実は日本の保育にも脈打ってきたことが確かめられました。
園を地域にひらかれた対話の場として捉え直すという本書の視点は、幼稚園や寺院を人々が集い学び合う公共の場としてひらいてきた、この土地の営みとも深く響き合います。そして、保育者や園の経営者自身が学び続けることは、めぐりめぐって子どもの育ちを、家庭を、地域を支えていく。「よい保育とは何か」という問いに、完成した正解はないのかもしれません。だからこそ、立場を超えて読み、語り合う場が続いていくこと自体に意味がある。この問いは保育者だけのものではなく、子どもとこれからの社会に関わる、わたしたち全員にひらかれた問いなのだと思います。
本読書会は「幼児教育と未来社会」リサーチプロジェクトおよび創教出版株式会社の主催で開催されています。次回は8月19日開催。今後の予定や参加申し込みについては、以下のURLをご覧ください。
https://forms.gle/UDWx28Gtut6uPbsP6
